2021/09/20

当院における下肢静脈瘤手術術式の変遷と治療成績

オフィシャルサイト
著者
斎藤聰
掲載誌
山口医学 70 (1), 17-28
発行年
2021
要約

【目的】下肢静脈瘤手術は長年ストリッピング手術 が標準術式であったが,低濃度大量局所浸潤麻酔 (TLA:tumescent local anesthesia)の活用や種々の工夫により低侵襲化と日帰り手術や早期退院が可能となった.更に近年は血管内焼灼術(ETA: endovenous thermal ablation)が登場し,各種波長のレーザー焼灼術(EVLA:endovenous laser ablation)や高周波焼灼術(RFA:radiofrequency ablation)が保険適用となっている.当院では2012年8月にETAを導入し現在まで複数の機器を使用してきたが,これら治療法の妥当性について検討を行った. 【対象と方法】2012年8月から2020年7月までに当 院で施行した伏在静脈系の下肢静脈瘤手術1,272例のうち,ストリッピング手術(ST群,311例),波長980nmのレーザーによるEVLA(980nm群,191 例 ),波長1470nmのレーザーによる EVLA (1470nm群,717例),RFA(RF群,53例)を対象とし,各群の手術成績を比較した. 【結果】手術時間はST群が他群より有意に長く,鎮痛剤の内服総数と術後皮下出血の頻度はST群と980nm群が多かった.EHIT(endovenous heat‑ induced thrombus)の発生率は各群間に有意差はなく,臨床上問題とされるclass3を1470nm群に4例認めたが経口抗凝固薬により改善した.いずれの群でも観察期間中の深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の合併を認めず,静脈の再疎通は980nm群に1例のみ認めた. 【結語】当院のストリッピング手術とETAの治療成績は良好で重篤な合併症もなかった.特に波長 1470nmのレーザーによるEVLAとRFAは手術時間の短縮と術後疼痛の軽減が得られ,再疎通はなく有用な治療法と考えられた.

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